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心房細動によって生じる脳梗塞(心原性脳塞栓)などの血栓塞栓症(図4)

 心房細動では心房が小刻みにふるえる状態になりますので、心房はしっかりとした律動的な動きが出来ずに左心房内(特に左心耳)で血の塊(血栓といいます)ができることがあります。
 それが大動脈へと飛んでいき脳の動脈を詰めてしまうとその抹消部分の脳が壊死してしまい脳梗塞という重大な病気になります。脳は様々な生体活動を司っていますので、その部分が支配する領域に応じて神経症状が出てきます。
 例えば運動領域の脳が壊死すると運動麻痺が生じますし、感覚領域の脳が壊死しますと感覚の障害が出ます。その他目が見えなくなったり、真っ直ぐ歩くことができなくなったり、喋れなくなったり、めまいがしたり等の様々な神経症状が出現します。さらにこの脳梗塞のために死亡したり、寿命を縮めることもあります。
 また、脳以外でも足の動脈や手の動脈が詰まると手足の筋肉の壊死が起きますし、内臓の動脈に飛んでしまうと臓器の壊死が生じます。一般的に心房細動の患者さんの死亡率は健康な成人に比して5倍と言われています。

 

 それではどのような心房細動の患者さんが血栓塞栓症を発症しやすいのでしょうか。この件に関しては世界的にCHADS2スコアという評価方法が用いられています。
 CHADS2というのはそれぞれの項目の英語の頭文字を取ったものですが、Cは心不全(Congestive heart failure)を、Hは高血圧(Hypertension)、Aは年齢(Age、75歳以上)、Dは糖尿病(Diabetes mellitus)を、Sは脳梗塞の既往(Stroke)を意味します。
 脳梗塞の既往は2点と換算されますが、それ以外の項目は1点と配点されます。そしてこれらの合計点で血栓塞栓のリスクを判断します。心房細動患者さんの年間の脳梗塞の発生率はCHADS2スコアの点数×2(%)となります。すなわち、CHADS2スコアが1点であれば年間の脳梗塞発生率は1点×2=2%と計算できます。
 もし78歳の心房細動の男性で、高血圧と糖尿病があれば、CHADS2スコアは年齢(75歳以上、1点)、高血圧(1点)、糖尿病(1点)の合計3点となり、年間の脳梗塞発生率は6%と推定できます。

 さて、心房細動による脳梗塞にはどのように対応したらよいのでしょうか?そのためには心房細動を発生させなくする方法と、血栓ができにくくする方法の2つにわかれます。前者については後ほど述べますので、ここでは後者のお話をします。
 血栓ができにくくするためには血液をサラサラにする必要があります。このためには抗血小板剤と抗凝固剤の二種類がありますが、心房細動によって生じる血栓には抗血小板剤の効果は限定的であるとされています。このためCHADSスコア1点以下の低リスクの患者さんにのみ用いられます。CHADS2スコアが2点以上の患者さんには抗凝固療法が推奨されます。


抗凝固療法

 抗凝固療法とは、生体反応である血液の凝固反応にたいして薬剤により凝固しにくくさせる治療法ですが、現在本邦で使用できる抗凝固療法はワルファリンとプラザキサ(一般名ダビガトラン)の2剤です。いずれの薬剤も心房細動による血栓塞栓を70%減少させるとされています。

 しかし、一方で出血性の合併症が重大な問題点として挙げられます。最近発表された大規模比較試験であるRE-LY試験(N Engl J Med 2009;361:1139-1151)では抗凝固療法で年間約3.3%に重篤な出血性合併症が発生し、約1.8%に生命に危険を及ぼす出血性合併症が、0.74%に頭蓋内出血が生じたと報告されました。
 このため心房細動の患者さんでは、ある程度以上(CHADS2スコアが2点以上)の血栓塞栓症のリスクがなければ抗凝固療法によるメリット(血栓塞栓の予防)がデメリット(出血性合併症の発生)を上回りません。
 なお、双方の薬剤で出血性合併症の危険性はほぼ同等とされています。また、これら2つの薬剤にはそれぞれ長短がありますので、投薬を受けている患者さんは薬剤の特性を医師や薬剤師に聞いてください。

 簡単に説明するとワルファリンは古くから使われているため多くの経験が蓄積した薬剤ですが、使い方がやや難しいため専門医以外は使いこなすことがなかなか困難です。使用量が少ないと全く効果がなく、使用量が多いと効き過ぎて出血性の合併症を生じます。
 通常PT-INRという血液検査で効果を判定しますが、INRが2.0から3.0にコントロールされれば有効と判断されます。もっとも、日本人は欧米人に比して凝固能が低いので1.6-2.2程度でも有効という報告もあります。

 PT-INRの測定は投与開始時は頻回に、安定した時期でも最低月に一度行いワルファリンの投与量をコントロールする必要があります。また、ワルファリンはビタミンKの阻害剤であるため、ビタミンKを含む食品を摂ることが許されません。その中には日本人の大好きな納豆、緑色野菜、クロレラなどが含まれています。またワルファリンは他の薬剤との相互作用がとても多いので、他剤を併用するときには注意が必要です。さらに肝臓病の患者さんではワルファリンの効果が過剰に出やすいことも注意点です。
 一方、プラザキサは効果の安定した抗凝固剤であるためPT-INRをモニターする必要はありませんが、高齢者、体格の小さい人、腎機能が低下した人、消化管出血の既往のある人では重篤な出血性合併症が生じ死亡例も報告されていますので注意が必要です。




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