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カテーテルアブレーションの合併症

 心房細動アブレーションは、他の頻拍のアブレーションに比しての合併症発生率が高率でありリスクが高い手技といえます。そのため、アブレーション手技は十分な経験を積んだ術者が行わなければなりません。2010年に発表された世界のアブレーション先端諸施設での調査(Cappato R et, al.CircArrhythm Electrophysiol. 2010;3:32-38)では、4.5%に主な合併症が発生したと報告されました。

 その中の重篤なものとして死亡(0.15%)、心タンポナーデ(1.31%)、脳梗塞および一過性脳虚血発作(0.23%と0.71%)、食道−左房瘻(0.04%)、肺静脈狭窄(0.29%)、横隔神経麻痺などが挙げられています。
 本邦では横須賀共済病院の高橋淳先生たちの報告よれば(Takahashi A, et al. Circ J 2009; 73:221-226)、1600例の経験で脳梗塞(0.25%)、心タンポナーデ(0.6%)、食道迷走神経障害(0.19%)、一過性の横隔神経麻痺(0.38%)の発生が報告されています。幸いに最も重篤な合併症である食道−左房瘻は発生しなかったと報告されています。

 それではこれら重篤な合併症について、まず比較的頻度の多い心タンポナーデから説明していきます(図11)。

 

 心タンポナーデとは心臓をタンポナーデするということですが、タンポナーデとは圧迫の意味です。心臓からの出血で心臓が圧迫されることを言います。
 というのも、心臓内でのワイヤーやカテーテルの操作によって、薄い心臓壁にその先端があたった場合や、焼灼部位が心臓の外側まで達した場合に、心臓の外側まで穴が空いてしまうことがあります。これを心臓穿孔といいます。この場合、出血した血液はどこにいくのでしょうか?

 実は、心臓は心嚢(しんのう)という袋の中で動いています。心臓穿孔が生じた場合、心嚢内に血液が貯留します。液体の貯留が一定量を超えると心臓を圧迫するため心心臓が拡張することができなくなり結果的に拍出量が減り、血圧が低下します。この状態を心タンポナーデといいます。
 心タンポナーデは早期に気がついて適切に対処すれば問題なく処置できますが、気づくのが遅かったり出血量が多すぎる場合には死を招く可能性のある注意すべき合併症です。心タンポナーデが生じた場合、図のように局所麻酔下に心臓の近くの胸壁からカテーテルを挿入し血液を抜く必要があります。これを心嚢穿刺といいます。
 ほとんどの場合は心嚢穿刺のみで十分対処可能で、術翌朝には心嚢へ挿入したカテーテルを抜去できますし、その翌日には退院が可能です。まれに心嚢穿刺の手技自体で心臓の血管を傷つけたり、肝臓や肺を傷つけることがあり、外科的処置が必要になることもあります。さらに、心タンポナーデが生じた場合、安全性を考慮し。アブレーションを中止することもあります。

 次に説明するのは脳血栓塞栓症です(図12)。

 

 脳梗塞はカテーテルアブレーションにおける重大な合併症の一つです。特に心房細動や心室頻拍のアブレーションで生じることがあります。
 焼灼中にカテーテル先端が高温になり、血液が固まったり(これを血栓という)、シースというカテーテルを出し入れする管の中で血栓ができ、それが血流にのって脳へ飛んでしまうことによって脳梗塞が発生します。

 脳梗塞が発生すると様々な神経障害が生じ、脳梗塞の部位により運動麻痺(半身麻痺など)、感覚障害(しびれ、感覚がなくなるなど)、言語障害(呂律が回らない)、視覚障害、歩行困難などの重篤な症状が出現し、時に不可逆性の症状を呈します。もちろん、これを予防するために、手術中はヘパリン言う血液をサラサラにする薬剤を十分使用し、定期的に血液検査をすることによってその薬の効果をチェックしています。

 その他、数多くの工夫によって脳梗塞が生じないよう細心の注意を払っています。極めてまれですが、脳梗塞ではなく、血栓が他の臓器にとんでしまうことがあります。その場合、その臓器の梗塞を起こすことがあります。心筋梗塞もその一つです。
 また、頻度は少ないものの必ず頭において置かなければならない重篤な合併症に肺静脈狭窄があります(図13)。

 

 各肺静脈をより遠位側(より心房から離れたところ:図13左、橙色の点線)で個別に隔離した場合、焼灼の影響によって、術後しばらくして肺静脈が狭窄することがあります(図13右)。
 この肺静脈狭窄が生じると、息切れや胸痛、血痰が生じることがあり、場合によってはバルーン(風船)によって拡張するカテーテル手術が必要になることがあります。このような合併症を防ぐためにも、我々は常に、肺静脈から離れた部位でアブレーションを行なっております(図13左黄色のタグ)。

 横隔神経麻痺も注意すべき合併症の一つです(図14)。

 

 呼吸筋の一つである横隔膜を動かす神経が横隔神経です。右の横隔神経は、頚髄から下降し、ちょうど上大静脈のすぐ横を走っています。
 心房細動の一部や、心房頻拍の一部で上大静脈のアブレーションが必要になることがありますが、その際にこの横隔神経を傷つけることがあります。多くは一時的で、回復しますが、まれに横隔神経麻痺が持続することがあります。ほとんどの場合無症状ですが、呼吸困難感などが出現することもあります。

 最も重篤な合併症が消化器運動障害と左房―食道瘻です(図15)。

 

 左心房の後ろには食道が接しています。その接し方には個人差がありますが、およそ左肺静脈、とくに左下肺静脈の真後ろを走行しています。
 カテーテルアブレーションによって、食道に接する部位の左房を焼灼すると食道にまでその熱が伝導し、食道に潰瘍等を形成することがあります。

 非常に稀ですが、最悪の場合は左房と食道が交通してしまい(左房―食道瘻という)、生命の危険に至ることになります。実際、左房―食道瘻が発生した場合には死亡率75%とも言われています。
このような合併症を防ぐために、我々は食道近傍の左房を焼灼する場合は、食道温度をモニターしたり、温度が上昇する場合は、氷水を飲んでもらうことで食道の傷害を減らす努力を行なっております。

 食道そのものには異常がなくても、食道周囲にある神経(胃などの運動を司る)に傷害が及ぶことがあります。この場合、胃の動きが悪くなり、満腹状態が持続するなどの症状が出ます。多くは数ヶ月で改善します。




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